第50回 〈暮らしの中の看取り〉準備講座

=最期まで輝いて暮らすために=
身の回りのものでできる工夫で
“できる”と“やりたい”を引き出す

 

今回の「〈暮らしの中の看取り〉準備講座」は、山上智史さん(株式会社K―WORKER 福祉用具事業兼便利屋事業部長)をお迎えしました。

テーマは「=最期まで輝いて暮らすために=身の回りのものでできる工夫で“できる”と“やりたい”を引き出す」。

山上さんには2017年2月第12回のときに初めてくみサポで講師をお願いし、今回は記念すべき50回目にご参加いただけました。

《在宅生活をサポートしている山上さんが実際に支援した事例15症例》をご紹介していただきました。

自宅や施設での移動方法、昼夜逆転、食事姿勢などたくさんの事例をうかがい、参加者はその解決方法に目から鱗の状態でした。

そして今回の事例から、できなくしている原因を深掘りし、環境に目をむけることの大切さを実感しました。

例えば、

・室内だけでなく外でも良く躓くAさん。注意力低下と視力の低下を認めています。室内は段差解消できるけれど…外ではどうしたらいいのでしょう?

→解決策は!

靴の色を素敵な赤色にする。そうすることで足元を意識して歩行するので躓きが減った。

もちろん、注意が向きやすい色の靴を選択する工夫もさすがですが、素敵なものを身につけていると、人は気分も良くなり足元も軽やかになりそうですね、そんな心遣いにも心が温かくなりました。

・施設で生活しているBさん。食事中のテレビが楽しみな方です。新しい施設に入り、食事中むせるようになった。原因は何だろう?とりあえずトロミ対応へ変更。

→解決策は!

環境をよく観察すると…テレビが上の方に置いてある、そしてテレビがよく見えるようにとBさんは一番前の席になっていました。(映画館の一番前の座席をイメージしてみて下さい)

 そうなんです、テレビを見上げて食事をして、むせやすい姿勢になっていました。

テレビとテーブルの配置を見直すことで、その日からムセ込み減り、とろみなし、常食へ。

「環境のせいでできなくなっている人がいる。本来の機能を引き出す工夫できていますか?」

この問いかけにドキッとした専門職、驚いた一般市民のみなさん。

講演の最後、山上さんからの

「在宅環境を広い視点でとらえる 住まい→住まいる☺になる、そんな支援をしたいですね。」この言葉に参加者一同スマイルになりました!

最後に、参加者の皆さんからの感想をご紹介します。

対象者を出来ない人ではなく、出来る能力があると言う視点で考える。環境のせいで出来なくなっているのではないか。柔軟な考え方を持つ事の大切さ家族や利用者さんと一緒に考える時間が大切ですね。

・患者さんやご家族さんの意見を、他職種で共有することで、アイデアが出てくるのでしょうね。昔から言われている情報共有の必要性および目的が、今回のご講演でまた一つ増えた気がします。自分では問題点に何とか解決策を提供したいと思って提案しても、押しつけになってしまっているのではないかと心配になります。

・介護用品を扱われる方の、利用者への立場にたっての想い「環境つくりの大切さ」の重要性など、お話を聴かない限り一般市民は判らなかったと思います。元気なうちにこのような機会を得られた事は勉強になりました

「できない」の視点を「何ならできるか」に切り替えていく柔軟な思考が大事。それが利用者の生活を豊かにしていくという事を、医療者も家族も認識していきたいし、情報共有のチャンスを増やしていけたらと思う。

・わかりやすい言葉でおはなしいただき、広く市民の方に知っていただきたいと思いました。

利用者側も困り事に気付き、伝えて一緒に考えていく事も大切ですね。

・僕の行なっている歯科訪問診療では、僕の他に歯科衛生士とコーディネーター(ドライバー)がチームを組んでいるので、そのメンバーにも意見を聞くようにしています。

・介護用品を扱われる方の、利用者への立場にたっての想い「環境つくりの大切さ」の重要性など、お話を聴かない限り一般市民は判らなかったと思います。元気なうちにこのような機会を得られた事は勉強になりました。

・みなさんのお話しの中で出ていましたが、専門職こそ、自分はもう知ってる…ではなく、あえてそこを学び直す場をもつことが視点を広げることにつながるなと思いました。いちリハスタッフとして思います。

・できていたことができなくなった時、その要素を細分化してみる事で、なぜできないのか(その人のどの力の衰え?環境要因?)によってサポートのヒントが見えてくる。食べられない=嚥下だけではなく、全身が影響するものとしてとらえてみる事が重要だと、改めて感じさせていただいた。対象になるその人をゆっくりと見つめて、姿勢を整えるにも、傾きなのか(鏡や肢位調整にタオルの活用)、視線によるものなのか(テレビの位置)、食べる動作をしやすい高さや位置があるのか(既製品だけに頼らず個別の体格に合わせたテーブルなど)など、丁寧にとらえてみる事が大切。それを考えると、じっくりと本人と環境を見直してみる、を意識して、「できなくなった」の判断を早めないこと。その視点を持つにも、「なぜこれが起きているのだろう?」「どうしたらやりやすいのか?」と疑問を持ちながら出来事を見る事を大切にしたいと思います。

「できない」の視点を「何ならできるか」に切り替えていく柔軟な思考が大事。それが利用者の生活を豊かにしていくという事を、医療者も家族も認識していきたいし、情報共有のチャンスを増やしていけたらと思う。 当ステーションの保健室での活動で、一般市民との活動があります。その中でも、皆さんに伝える事ができたらもっと多くの人に繋がっていくと感じました。 今回は少人数だったこともあって、参加者皆様の意見が聞けて良かったです

・父が盲聾者でほとんど見えない状況なのですが、お皿の柄が邪魔になるというところにまで気が付いてなかったと思いました。不自由な暮らしを少しでも改善できるように、諦めず、細かく観察していきたいです。