2019年9月7日 第25回摂食嚥下リハビリテーション学会でくみサポ(暮らしと看取りのサポーター)の活動を発表させていただきました。

介護レストランは、療養の場を問わず普段外食することが難しい方が、家族や顔なじみのケアマネジャー、介護士などの介護者と一緒に食事をする場を提供するもので、くみサポのメンバーが事前準備から当日の運営まですべてを担当し、ゆめタウン廿日市の協力を得て2017年より1年に1回開催しています。

多くの参加者が要介護者で、摂食嚥下障害がある方がほとんどです。

それでも、普段食べているものよりも少し形のあるものを食べたい、という希望も多くありました。

その方たちの「食べたい」希望をどう叶えることができるのか。

安全を確保しながら楽しい食事の場を持つためには、事前の十分な情報収集と専門職の存在は欠かせません。
しかし、安全ばかりを優先させることなく、参加者がその食事を食べたいと希望した、その裏にある思いや、
どんな風に食べたいのかという思いをしっかり聞き取ることを大切にしました。

良かれと思ってしている支援が本当に本人の希望にそっているか。
意外とそうでないことが多く、希望に沿っていない支援は本人にとっては苦しいものとなってしまいます。
くみサポは常にこのことを意識して活動することを大切にしてきました。
今回の発表ではくみサポのメンバーひとりひとりが、そのことをそれぞれ自分の言葉で発表してくれました。

また、この介護レストランの場に一般市民がいることの意味を今回の発表を通して言語化することができました。
病院や施設など、そこでは当たり前だと思っていることが、実は非常に偏った考えに陥っていることがあります。
一般市民の存在は、家族や本人の視点で、時として偏ってしまいがちな対応を見直すきっかけになります。
そして何より、一緒に食時をする場にいる一般市民の存在は、当り前の日常を感じるために欠かせません。

 

パネルディスカッション終了後には何人もの方から演者やくみサポのメンバーに声かけをいただき
次のようなコメント、ご質問をいただきました。

  • 地域の食支援のために何ができるかをずっと考えていた。今日のお話はその自分の想いのど真ん中の話しで今後の活動のイメージができました。

 

  • とても素晴らしい発表で、取り組み内容や情熱が会場の参加者に響いたと思います。くみサポは、市民目線を重視し、一体となって取り組まれたことで、圧倒的に深みがあると感じました。

 

  • 費用はどれくらいかかるの?

実は介護食を作って提供するわけではないこと、
レストラン街にある複数のレストランを利用させていただいていること、
またそのレストランにあるメニューを食べやすくひと工夫して提供していること、
送迎車両を無償で提供していただいているため車両のレンタルに費用がかかっていないこと、
当日のボランティアはくみサポのメンバーであることなどの理由でそれほど多くの費用はかかっていません。

 

  • 今までに事故はなかった?

各テーブルに参加者とその家族などの介護者、一般市民に加えて看護師や言語聴覚士、理学療法士など
普段の食事の様子を良く知っている人が同席します。普段どんな食べ方をされるのか、どういったところに注意が必要なのかを知っている人たちです。
さらには重度の摂食嚥下障害がある方には摂食嚥下障害認定看護師を配置しているためこれまで事故はありません。
チャレンジし過ぎて危ないときにはちょっと声をかけ、
臨機応変に安全に食べる工夫をその場で提案して実践しています。

 

  • 何を希望されるかわからないと事前にたくさんのものを用意しないといけないのでそこに費用がかかるのでは?

その場でメニューを見て選んでいただきますが、事前に食べたいものを聴き取っており、メニューを見ていただくのは選ぶ楽しみを味わっていただくためです。例えば、餃子を食べたいとおっしゃっていた方がチャーハンも食べたいと言われた場合、同席しているボランティアが餃子と天津飯を注文し、チャーハンには天津飯のあんを絡めて食べる提案をする。餃子にも案を絡めて食べると食べやすいことを提案するといった具合です。
事前に介護食を用意するとなるとかなり費用も掛かりますが、レストランのメニューを注文するのでその心配はありません。かかる費用はそのメニューのお食事代のみです。

また、参加者一人に対して一緒に食事をするのはボランティア含めて4~6人で、このグループ単位であらかじめ希望されていたレストランに分かれます。これまで利用レストランは5か所前後です。レストラン街にまとまっているレストランなので、食事中のラウンドには、共同代表の迫田、大井、地域の病院の医師である吉屋で担当して各店舗をさりげなく回って食事の状況を確認します。

 

まだまだ個別に多くの質問を受けました。

今回検証しきれなかったこと、お伝えできなかったことをさらに追加して、今後も発信していきたいと思います。