正力厚生会助成 第60回記念大会 〈暮しの中の看取り〉準備講座

=暮らしの中の看取り=

「自宅で逝きたい」はどうしたら叶えられる?

  現状確認ツールIMADOKOを用いて考える看取り

 

今回、正力厚生会の助成を受け、小金井市萌え木ホールでの集合形式とオンライン形式のハイブリッドで

それも会場とオンラインの双方でグループワークを同時並行で進めるという難易度の高い方式で開催しました。

これを可能にしたのは、技術サポートの小瀬さん、オンライン進行をサポートして下さった浦山さん(以下うらりん)、木村さん。そして、オンラインと会場でのそれぞれのファシリテーターのみなさんのおかげです!

 

ということで、

現地会場には小金井市および都内、神奈川、埼玉、茨城より50名(医療介護専門職が21名、市民が29名)、

オンライン会場には北は北海道、南は大分まで全国から33名(医療介護専門職が26名、市民が7名)と

多くの方の参加をいただきました。

 

まずは初めてお会いする方同士ですので

(1)知り合いタイム

・今日呼ばれたい名前/秋といえば…/私のお気に入りの息抜きは/今日参加した理由

現地とオンラインそれぞれで4〜5人のグループでご挨拶

みなさん、すぐに打ち解けて、あっという間に時間がなくなり、もっとおしゃべりしたいという雰囲気でしたね。

 

次は、

(2)学びの時間です!

 

NPO法人くみサポ共同代表理事の大井さん(在宅緩和ケア医)からは、

「自宅で逝きたい」はどうしたら叶えられる?
現状確認ツールを用いて考える看取り

のお話をみなさんと聴きました。

 

・看取りにかかわる現状は、自宅で看取られるのは6人に1人、がんの場合:自宅で看取られるのは8人に1人。

あとは病院で亡くなる。

・6割の方が自宅で人生の最期を迎えたいと希望しているにもかかわらず、6割以上の方が最期まで自宅での療養は困難だと考えているというアンケート結果。

その理由の大きなふたつは、介護してくれる家族に負担がかかる&症状が急変したときの対応に不安がある。

 

・これらの漠然とした不安が解消されれば、自宅で逝きたいが叶えられるのかも!

そのためには、自分のその時の生活をイメージしながら、どんな暮らしをしていたいのかを考えてみること!

 

それを手助けしてくれるリーフレット2冊を紹介いただき、これらの中から誰もが通る人生の最終段階で起こる

身体機能の変化を市民にも具体的でわかりやすくお話いただきました。

1=どんな状態でも住み慣れた小金井で最後まで安心して看取り・看取られる/小金井市 2022年11月

2=みんなで活用する現状確認ツールIMADOKO/NPO法人くみサポ 2023年11月

1)人生の最終段階でどんなことが起こるか知っておくこと

認知症や老衰であってもがんを患っていても、次のような生活の変化が起こるということ。

徐々に体力が低下し、外出や通院がおっくうになってくる

→入浴時にひとりで浴槽に入ることが難しくなってくる

→トイレに介助なしで歩いて行くことが難しくなってくる

→本当に食べられない時期がやってくる

→最期のときを迎える

これらの変化は、認知症や老衰の場合ゆっくり進むが、がんの場合入浴が難しくなってきてからの変化が2〜3ヶ月のうちに

急激に進むのが特徴ということ

 

逆にこれら日常生活上の変化が起こることを予め知っておくと、今このあたりだから今のうちにみんなで旅行に行っておこう、会いたい人に会っておこうと逆に考えられるんだということを紹介してくださいました。

 

ただ、誰もがこのような変化を知りたいわけじゃないので注意が必要!!

・患者や家族、それぞれの想いや気持ちがあるので、それぞれが知りたいなと思ったタイミングでお話しないと気持ちが追いつかず知りたくなかったのにということもありうるので、ここはとても重要!!

 

でも、余命を知るよりもこんな変化が起こるということを知りたかったんです!という方も多くおられる。→だから話すタイミングはとても重要!!

 

2)在宅療養の場合、家族にかかる負担ってどんなこと、どんなサポートが受けられる?(不安その1)

ひとりで浴槽に入れなくなったときには、介護保険でヘルパーさんに入浴介助を頼めたり、ポータブル浴槽を運んできての訪問入浴、あるいはデイサービスなど訪問先で入浴してくるという選択肢もある。

ひとりでトイレに歩いていけなくなったときには、同じようにヘルパーさんに介助をお願いしたり、家族の負担を減らすためにオムツにするという選択肢もある。

この先、本当にベッドの上だけでの生活になってくると家族の体力的な負担は軽くなってくる。

 

これまで元気だった方ががんになった場合、入浴が難しくなってきた頃が家族の負担が一番大きい。

介護保険の手続きを早めにして、うまく利用して家族の負担を減らすことが大切!介護休暇を取るならこの時期に!

介護離職なんかしなくても大丈夫ですよ!

 

3)最期が近いときどんなことをして過ごしたい?

大事なことは、自分のこととしてイメージし言葉にしてまわりの人に伝えておくこと!

・最期のときをホスピスで過ごされた4名の方のエピソードから、この時期はつらいだけじゃなく積極的に生きられる時間でもあることを紹介いただきました。

こうして欲しい、こうして欲しくないということを伝えておけば、意思表示ができなくなってもそれが判断基準となる。

 

4)症状が急変するってどんなこと?(不安その2)

・実は人生の最終段階に起こる多くの症状は予測されたことで急変ではない。全身がだるい・食欲がなくなる・口が乾くはほぼ全員に起こること。このことを知っておくだけでも心の持ちようが違う。

そして、全身がだるければ体をさする、口が乾けば言葉も出ない→湿らせてあげると言葉が出るようになる、など家族でもケアができることがある。

・点滴や胃ろうよりも食べたいものを食べたいタイミングで食べられるようサポートできる方がおられると喜ばれる。そんなサポートができる方を見つけておくことは大事ですね!

 

5)どんな看取りでも後悔のないものはない→少しでもよかったなと思えることがあるといい

・大井さん自身の家族4人との死別体験もお聞きしました。
それぞれ違うこと、本人の気持ち/介護する側・残されるものの気持ち

 

 

NPO法人くみサポ理事の是枝さん(グリーフサポーター・葬祭士)からは、

自宅で看取られた後のお見送り(葬儀)のこと

のお話を聴きました。

 

・自宅あるいは病院で看取られた後、葬儀までの霊安場所というのは選べて、家族に選択肢がある。

・必ずしも自宅でなくても葬儀屋さんにお願いすることもできる。

・身体が傷まないように冷やすことが大切。葬儀屋さんがサポートしてくる。

・マンションやアパートでもお見送りすることもできる!

・看取りまでを頑張って疲れてしまう方もおられます。看取りのあとお見送りまでにしなければならないことってなくて、葬儀屋さんがサポートしてくれるのでゆっくりできる。

・生前はできなかったけど、ちょっとだけこんなことしてあげられたということがあれば素敵な体験になる。

 

普段なかなか聴けないお話でした。タワーマンションでもお見送りできるんですね

 

 

 (3)休憩&リラクゼーション

5分の休憩後、小園さんのリードで身体を伸ばしたりしてのリラクゼーションの時間でした。

 

さあ、ここから後半

グループワークに入る前に、うらりんより

(4)対話するときの重要なポイントをオリエンテーション

 

肝は、目的があってそれに沿ってお話すること/しっかり聴いて、短く話す/一方通行ではなく双方向で!

 

(5)グループワーク

現地会場では4〜5人が車座になって、〈えんたくん:円形の段ボールを皆の膝の上に乗せて円卓にする〉を使い、その上に話した内容を書き留めて行きました。

オンライン会場では4〜5人の小グループに分かれて対話、ファシリテーターが〈Googleスライド〉に書き留めました。

 

話すテーマは、

  • 今の話を聞いた感想や気づいたこと

次に

  • 自分の人生の最期の時間をどう過ごしたい?何を大切にしたいか言葉にしてみよう。
    何をサポートして欲しいか、して欲しくないことを言葉にしてみよう。

 

その後、各グループで話されたことを全体で共有しました

 

最後のテーマは

  • 地域で“私”ができること

 

現地会場でどのようなお話されたかは、みかんさんのグラレコをご覧いただくこととして、
初めてお会いする方同士でしたが、自分の最期をイメージしてみるという縁起でもない話のはずなんですが、
すごく盛り上がって対話されていたと思います。

講師のお話やグループの方のお話を聴いて今日新たに気づいたことがあったことをお話されたり、
逆に知らない者同士だからこそ話せることがあるのかもしれません。

これがきっかけで何らかのつながりが持てるといいですよね。

 

さて、オンライン会場ではどんな様子だったのでしょう?

日本各地からの参加者とグループで話をすることができ、オンラインならではの時間となったようです。

それぞれ地域の特徴を聞きながら、自分のことだけでなく、離れて暮らす親を思いだしながら、
地域のリソースや具体的なサポートを知らないことに気づいたという感想もありました。

また、小グループでの話し合いは、話された言葉をファシリテーターが〈Googleスライド〉へタイムリーに書き留め、それを皆で見ながら話を進めるという進行でした。

初めての取り組みに緊張もしつつ、可視化されることで、テーマに沿って話を深められたりもしたようです。

 

「朝起きたら眼鏡をかけさせてほしい」という日々の生活が見えそうな意見や、
「最後の場面のファシリテーターがいたらいい」となるほどと思う言葉、
会場での〈えんたくん〉のように、皆で見つめてなるほどと共有する場を持つこともできました。

オンライン参加者にはうらりんの場を和らげるようなオリエンテーションや声掛けもあり、
画面に映る自分を見ながら、みなさんいつもより少し笑顔を割り増しにしてご参加くださったのではと思います。

 

 

この日に感じたこと・気づいたこと・考えたことをご家族や身近な方とお話してみてもらう、そんなきっかけなれば幸いです。

参加されたみなさま、準備から当日のサポートまでご協力いただいたみなさま、助成していただいた正力厚生会に感謝申し上げます。