第52回〈暮しの中の看取り〉準備講座

~「聴く力」を養うシリーズ第9弾~

聴くこと❤みんなができるスゴイこと

 

第52回〈暮らしの中の看取り〉準備講座

=聴くこと♡みんなができるスゴイこと=

 

「聴く力」を養うシリーズとして「仙台聞き書き隊」代表の玉井照枝さんと、

音楽療法士で「ケアxアート♪ポラーノの椅子」代表の植木亜弓さんをお迎えしました。

 

まずは玉井さんのお話

1.聴く力 みんなができるスゴイこと ―聴くことはそれだけで援助になるー

  聞き書き みんなができるステキなこと

ゆったりした語り口調に、聴き手になった私たちがほっこりとする時間でした。

 

聴き上手なるには、

・自分自身を道具として活用する

・話し手が話したいことの水脈を探し当てるように聴き、語られることを一緒に楽しむ

・ただただ聴くこと、それが語り手と聞き手が信頼関係を育む

 

そして、語り手と聞き手の信頼関係から紡がれる「聞き書き」とは

・人生の語りを聴き、ご本人の喋り言葉で綴り1冊の本にして差し上げる活動

・楽しい聞き書きにはリズムがあり、「へぇ」「そうなんだ~」「それで?」ともっと知りたいという思いからの言葉が、さらに語りを深める

・様々な場面を振り返り、人生の見直し作業の機会

・文字として残る“財産”、聴き手にとっても知恵を受け継いだり生き方を学ぶ場

・語った本人は、自分には語り伝える役割があることに気付き、生きる力を得てもいく

というものだそうです。

人と人とのつながりは、支えを生むのですね。

 

また、植木さんの音楽と共に、聞き書きとして語りを聴いた場面を再現してくださいました。

玉井さんの言葉かけと、BGMとして語りを支えたという植木さんが演奏するライアーでの“埴生の宿”により紡がれた時間。オンラインではライアーの音が十分届かない部分もありましたが、聴き手のみなさんは想像で埋めていたことでしょう。

静かに流れる音楽が、穏やかな時間を作る手助けにもなっていたと感じられました。

 

 

そして、植木さんのお話

2.その人を癒す音楽はその人の中に…

音楽を道具に、相手の内側にあるものを「聴く」ことについてお話しくださいました。

 

・音楽の三要素はリズム、メロディ、ハーモニー(ハーモニーが一番高次機能)

・認知症の方などには高次の理解が難しくなるため、理解しやすい簡単なメロディやゆっくりなテンポのものを選択する(ゆったりした童謡など)

・音が流れる時間だけでなく、歌い終わった後の静かな間もまた音楽

・言葉として聴こえない、内側にあるものを外在化して一緒に感じていく

 

音楽療法は特別なことではなくて、好きだった音楽、その時代に流れた音楽をインターネットで一緒に探したり、その時代を思い出して会話をする、ということでもいいのだと気づく時間でした。

言葉を出せない方でも、動きのテンポや呼吸のリズム、表情、服の色合いなど、見えるものから探っていくというヒントもお聞きできました。

参加した私たち皆の中に、「音楽」という新たな道具箱ができた瞬間だったかもしれません。楽器ができなくたって、自分の声、口三味線でもいいんです!

3.全体でシェア:みんなができる・わたしにもできるスゴイこと

聞き書きも、音楽も、相手の世界に入っていくための一つの道具であることを学びました。お二人のお話に共通したのは、避けることのできない苦しい出来事も、人生を共に振り返ったり、抱いている懐かしさや嬉しい思いを表現に繋げてわかちあえる人とのつながりが、折り合いをつけていく支えや力になるということでした。

 

最後に、植木さんのギターに合わせ、オンライン越しに皆で「ケセラセラ♪」を唄う試みに、皆さんの顔がほころびました。

また明日から、「聴くこと」を大切にしたいと感じる時間を、ありがとうございました。

 

最後に参加者のみなさまからいただいたアンケートから少し感想をご紹介します。

・看取りについてはあまり意識的して考えたことはなかったのですが、我が家も同居の義父が80代後半になってきており、これを機会に考えていきたいと思いました。

・話の腰を折られる話はやはり2人だけでは場が持たないなら、第三者を入れるという事かなと思いました。

・お話を聴くキッカケのひとつとして音楽があるんだとと感じた。

・音楽療法は決して難しいものではなく、その方が嬉しい気持ちになれば、YouTubeでも何でも一緒に観たり聴いたりするだけでも良いというお話が聴けたことは、大きな学びでした。自分にもできそうなこと、やってみようかなと思うことが沢山今日見つかりました。

・「聞き書き隊」の実践を通じたお話は、聴くことから人生観まで深く関わってまとめ上げていただけるすごく奥深いお話でした。また音楽療法士とは、何かなと思っていましたが、ある程度理解ができました。

・音楽や傾聴など、その人の世界に入るための引き出しは様々あるということ。好きな音楽を言葉として教えてもらうことが難しい時にも、生きた時代や周りにあるものの色彩、動きなどの”メンタルテンポ”から、響くかもしれない音楽を探っていくことが十分にできる。そして、音楽の活用は、歌うことだけでなく、YouTubeで一緒に探す過程を楽しむ、ジャケット写真などから話題を広げる、ということもあるというのは発見だった。  聞き書きとは、その語り手にとって人生の振り返りであり、その延長にあるこれからをも語ることではACPにつながるもの。そして、地域や聞き手に相続していく知恵や生き方という財産であること。つないでいく役割がある、と語り手が感じられる=人とのつながりを意識される、そのこと自体が苦しみにも向き合い生きる支えの一つになることを改めて学んだと思います。

・音楽療法はクラッシックみたいな高尚なイメージがあったけど、その人が好きな曲なら演歌でもK-popでめ何でもいい。楽器が弾けなくても、口でイントロ歌ったり、リズムをとったり、Youtubeで動画を見ながら誰が好き?どんな所が好き?って聞いてみたり。一緒に聞くだけでもいい。