第34回「<暮らしの中の看取り>準備講座」

=地域コミュニティにおける食支援=

今日は何食べる?療養中の“おうちごはん”と援助

 

地域コミュニティにおける食支援シリーズ 今年度の第2回目の講座は、
愛媛県松山市で訪問看護師として活躍されている、定松ルリ子先生をお迎えしました。

本講座は、新型コロナウイルス感染禍の中で生活様式も変化し、
療養中の「おうちごはん」は大丈夫?どんな希望が?援助は?などの現状を聞き、
みんなで一緒に考えるために企画しました。

 

定松ルリ子さんは、日本でも数少ない摂食・嚥下障害看護認定看護の資格を持った「在宅看護のエキスパート」です。
今回の研修では初めに、メロンパンで窒息をされた患者さんのお話をされました。
定松さんが摂食・嚥下障害看護認定看護師を目指すきっかけとなった事例から紹介され、
食事援助に対する原点からお話が始まりました。

 

研修の内容は、多くの事例紹介があり、どの内容も、患者さん・家族に寄り添い、生活背景をもとに、
BestではなくBetterな食事を考えられていました。
食べたい思いに対し、本人・家族と真剣に話し合い、食べ方を考えることが大切であることを話されていました。

 

カレーのトッピングに「エビフライが食べたい」と言われた方の気持ちに寄り添い、調理師さんと何度も試行錯誤され、
えび・魚・山芋・冷凍つくねと、風味にかっぱえびせんを入れ、エビフライが完成。
カレーと一緒に食べられた患者は、うなずきながら、食べられたそうです。
このうなずきが、調理師さんの記憶に深く残っていることも、グループワークでお聞きでき、
1つの成功体験が、地域で仲間を作るきっかけとなったようです。

 

食事で大切なことは、「見た目」、「風味」、「味」、「食感」であり、すべてを考え、
工夫されていました。五感を感じて食事を楽しむことは、普段当たり前にしていることですが、
食べ物が制限された方にとっては、私たちが思う以上に大切であることも伝えて頂きました。

 

グループワークでは、講師への質問やおうちごはんの体験や工夫等を話しました(11グループ)。

<主な質疑>

・在宅栄養士の存在と活動を知りたい
⇒訪問栄養士は、制度はあるものの、施設で勤務している人が大部分で在宅に出る人材が不足。
今後活動の輪を拡げられるよう取り組む必要がある。

・病院からの退院指導で特に必要なものは何か
⇒「今日の昼ごはんは何食べるか」を想像して指導して欲しい。
試供品をたくさん持ち帰っても使い方がわからず放っておかれる。

・食形態を下げるのは容易だが、上げるのは難しい。
それをチームで取り組んでおられて素晴らしい。
食形態を工夫する方法や既製品を教えて欲しい。
⇒酵素系、離水しない物、肉をやわらかくする方法等を紹介された。

・言語聴覚士と認定看護師の役割の違いについて
⇒在宅では口腔・嚥下周辺をST.生活や全身状態から食事援助を看護師がしている。

・看取り時の最後の食事について
⇒食べられなくても、口をきれいに保つことが大事。美味しい唾液を飲むようにできる。
食べられるときに1サジのハチミツやジェルをあげることもできる。
湿って気持ちがよい状態にすることが食べることにつながってくる。

 

☄全体ファシリテーター:迫田 感想

定松先生の活動は、患者さんやご家族に寄り添い、全身状態や食べる状況を見ながら瞬時にケアの優先順位を考えられること。そしてチームに働きかけ願いを叶えるために、自分にできる最大の努力をし、“食べてうれしくなる”工夫しておられることです。

“松山市に住みたくなった”という人もあり、最良の時間を過ごすことができました。

 

☄食支援チームリーダー:黒瀬 感想

定松先生の、患者さんに対する熱い思いを感じることができました。患者さんの立場から何を思われているか、その思いにこたえるために、どの様な工夫ができるか、大変参考になる症例ばかりでした。この研修を通し、参加者が一つでも学んだことを活かし、コロナ渦で療養生活されている方への援助につながることを願います。

 

☄最後に参加者へのアンケートに記載された内容からみなさんと共有したい内容の抜粋です。

・介護を実際している方からはベストでなくベターな介護、というところでとても気持ちが楽になったとお話がありました。

・食支援を広げていくためのつながりを持てる場を作る(くみサポみたいな) 様々な垣根を超えた仲間によるチームが理想的

・管理栄養士の方が在宅療養の患者宅へ訪問は医師の指示がなければできないという現実を知り驚きました。

・在宅へうかがったとき、食べられなくなってきた患者さんにご家族が何か食べさせたいと言われたとき「サイダーシャーベット」をすすめていました。簡単に作れてご家族も「食べてもらえた」満足感が得られることが多くありました。患者さんは口の渇きも潤せ「食べた」満足感がありました。

・セミナー中にもありましたが、訪問歯科診療の居宅療養管理指導はケアプランとの直接の関係がない独立した介護サービスで、給付管理(支給限度額管理)の対象外となっているため限度額の心配は必要ありません。