〈暮らしの中の看取り〉準備講座

人生は想定外の繰り返し、その時どう向き合う?

がん経験者が語る、あなたが居てくれたからできた「素の自分との対話」

 

今回お話し下さったのは最近くみサポのメンバーに加わって下さった会社員の河野さんです。

10代からパニック障害の発作に苦しみ、50歳の時にがんの告知を受けられました。

2人に1人はがんになると言われる時代、がんになる事はある意味想定内だったかもしれない、

事実を受け入れざるを得ないと思う一方で、こうも思ったそうです。

 

「つかまるものがなくて溺れそう、助けて!」

 

そんなとき、溺れそうだった河野さんがつかまる「浮き輪」になったのは、

かわいい子供達、親友、職場の仲間の存在でした。

 

周りの理解、励ましを受け、治療を終えて元気を取り戻し、

普通の生活、仕事に戻れても、病気をする前の自分には戻れず、

時折心の隙間に入り込んでくる「悲しみ、不安、さみしさ、孤独」

他人に話せない自分でも分からない「心のざわざわ」 がありました。

 

躊躇いながら「マギーズ東京」のドアを開け、暖かいソファにもたれて、

何からどう話せばいいかな、と逡巡し、間と沈黙を大切にしてもらいながら話す時間、

それは悩みを解決してもらうではなく、

「夫でも父親でも会社員でもない、素の自分との対話」でした。

 

「自分との対話」によって自分の力を取り戻す芽を感じる事ができた河野さんは

「前向きに自分なりの生きる挑戦を続け、幸せのベースラインを上げていこう」と

日々過ごされています。

 

「河野さんは恵まれてていいね」「河野さんだからできるんだよ」と言われる事があると

おっしゃられたのが耳に残りました。

 

自分の苦しみを口に出せなかったり、家族や職場の理解を得られなかったり、

友達がいない人もたくさんいます。

 

もし「溺れそうな人」がいたら、

つかまって一息の休憩ができる「浮き輪」があちこちにあるといいですね。

私達がその「浮き輪」になれたらいいですね。

 

最後に参加者のアンケートでいただいたコメントをご紹介します。

・会話の中で、沈黙を恐れず、傾聴できるスキルをつけていきたい。

・以前開催されたグリーフケアの講座の中で、よく話を聴いてもらうこと、
その体験を重ねること、それがよい聴き手になることと教えていただいたことを
今日のお話を聴いていて思い出しました。
マギーズで「間と沈黙」を大切にしてもらいながら話を聴いてもらったその体験が、
今度は語り手として私たちに今日大切なものを伝えてくださったのだなぁと思いました。
これが支える側と支えられる側の循環なのだなぁと。

・患者様のご家族と話をしていると、不安に思われること、疑問に思われること等色々と耳にします。
ちょっとしたことでも気軽に話が出来る場所があると良いと思います。
気軽にという所が難しいとは思いますが。

・自分が病気になった時、なぜ?とかもっとこうなるべきよりも、足元の幸せに目を向け周りの家族や友人、
知人に感謝して生きていける事ができたらどれだけ幸せか。そういう思いに近づける生き方をしていきたい。

・相手のことを知ろうと努力すること。とっても大切なことだと思います。印象に残るコメントでした。

・支える、寄り添うと言う言葉は重く感じるし、出来ているかと考えたらどうしても出来てない事を
気にしがちだけど、溺れそうになった時の浮き輪になるという発想は、助けて’あげないと’ではなく、
いい考え方だと思った。

・レジリエンスという言葉と意味を知り、ぽっきり折れない力を持っていることがとても勇気づけられました。