第72回〈暮らしの中の看取り〉準備講座
人生を楽しむための快便のコツ

 

これまで最期まで食事を楽しむためにはというテーマで繰り返し開催してきましたが、今回は食べることと同じように大切な排泄のお話をテーマとして取り上げました。

講師は、広島記念病院の消化器外科医長の矢野雷太先生です。

病院では排泄外来を立ち上げられ、便秘や下痢、失禁など排泄で悩まれている患者さんに対し日々向き合っておられると同時に、病院の外でも精力的に活動されています。

たとえば、

排泄に関する正しい知識やアドバイスを遊びの中から伝えていこうと病院内の有志とともに地域のお祭りで出店され、〈うんちカーリング〉なる遊びで子どもたちを夢中にさせ、得点することで〈うんちおみくじ〉をひくことが出来、そのなかに〈うんちについての豆知識〉が描かれてあり、トイレでしている〈うんち〉の状態を通して普段の生活への一言アドバイスが得られるという、なんとも楽しい仕組み!

とても病院の先生やスタッフがされているとは思えない地域との関わり方です。

こんな医療スタッフ・関係者がいる地域はしあわせですね〜❤️

そんな院外での地域との関わりを紹介していただいたあとは、便秘とは?、そして快便のコツなるものを伝授いただきました。

便秘は女性に多いものと思われがちですが、高齢になると男女とも増えてきて80代になると男性の方が便秘になる方が多いそうです。
なんと、後期高齢者になると10人に1人は便秘なんだそう。

簡単に言うと便秘とは、
本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ること、快適に排泄できないこと。

では、便秘のときの対処方法は?

ある講演会で聞いてみると、
食物繊維の多い食事や運動、水分補給など(51%)

便秘薬を購入して使用する(15%)、

病院を受診する(6%)

 

市販便秘薬の場合、連用しているとだんだん効かなくなるのは刺激性下剤と呼ばれるもので気をつけましょう。

便秘薬には、3つの種類があるので使い分けするといいそうです。クリニックで相談しましょう。

  • 便性を整える薬
  • 腸の動きを促す薬
  • 困った時に出す薬(刺激性下剤)

それよりも薬に頼らない快便を目指すには!
いよいよ快便のコツです。

その1:便意が高まるBIG WAVEに乗ること!

胃が動くと腸も動きだすので、食後30分から1時間がその時間帯。
かつ
寝ている間は腸の動きは落ち着いている→朝起きると腸が活発に動き出す。

朝食後が一番BIG WAVEが来るタイミング!

朝、支度をしてから食事をして、すぐに家を出ていませんか?

この順番だと出勤途中にBIG WAVEが来るので、タイミングよくトイレが見つからないと排便のタイミングを逃すことに。
まさにこの状況でしたと振り返られる参加者の方もおられました。

みなさんはどうでしょう?

ラジオ体操(体を伸ばしたり捻ったりする運動)も真剣にやると腸の活動を刺激するそう。

まず、
朝食を摂ってから支度をすれば、家を出る前にBIG WAVEが来てトイレに行けますよとのアドバイスをいただきました。

朝食前に、起きてコップ1杯の水を飲み、真剣にラジオ体操をすると更にBIG WAVEが来やすくなるそうですよ!

その2:正しい姿勢で正しく息む!

直腸と肛門が一直線になるような姿勢をとることが出しやすいそうです。

それはどんな姿勢か?

和式でしゃがんでいる姿勢だけど、洋式の場合には足台を用意して足を乗せて少し前屈みになると同じような姿勢になるんだそう、目から鱗のお話でした。

すぐに試せそうですね。

実は、食事を改善したり、便秘薬を使うより、まずは始めるといいですね。

息み方は、腹式呼吸で吸ってお腹を膨らますと腸が押されて便が出やすくなるそうです。
多くの方は間違って、肛門を閉めていることが多く、逆に出にくくなっていので気をつけたいですね。

その3:するっと出る便をつくる!

1)しっかり食事を摂っているか?
2)水分をしっかり摂っているか?
3)どんなものを食べているか?
(食物繊維(不溶性・水溶性)、オリゴ糖、発酵食品)

便秘になったとき、多くの人は食事の内容を考える人が多かったですが、実は3つのコツのうちの一つしかしていなくて、その一つの中でも一部しかしてなかったんですね。

いやぁ、タメになるお話のオンパレードでした!

便秘だけでなく便失禁の方も多いそうです。
このお話も盛りだくさんでタメになるお話でしたが、それはまた別の機会に…

最後に
関西大阪万博で6/24に開催された世界初のオムツのファッションショー、

O-MU-TSU WORLD EXPO2025
こちらを企画した4人のうちのおひとりが矢野先生!

紙おむつメーカー7社とワコール、そして矢野先生たちとでファッションショーを開催されたそうです。

多くの人に情報を届けて世界が変わるにはひとつのチャンネル(例えば介護・医療)だけでは難しく、いろんなチャンネル(企業や行政、NPO、マスコミ、インフルエンサー)が発信する(Collective Impact)ことでようやく世の中が変わる動きが始まるということを熱弁されました。

当法人にとっても共感できることで、うんうんと頷きながら聴いていました。

 

矢野先生からのお話を受けて、
泰田からは、大井先生がつくられた〈現状確認ツールIMADOKO〉を用いて、徐々にトイレに行くのが負担になるというお話をしました。

そして、一昨年家で看取った父親のことを思い出しながら、トイレに行くことは誰もが最期まで自分でやりたいと思うことのひとつだったと。

人生の終盤で、入院か自宅かを選択するのは、トイレに行けなくなったときが多いとのお話もさせてもらいました。

自宅を選んだのは、父の希望である最期までビールとタバコは楽しみたいを叶えるためで、オムツ替えはヘルパーさんたちにお世話になることで家族の負担は少なく、逆にそれまでの方が家族の負担は大きいこと。

しっかりとケアマネジャーさん訪問診療の医師とお話をして連携をとれば、訪問看護師や訪問リハ、ヘルパーさんにお世話になることで家族の負担が少なく在宅で看取ることが出来たという経験をお話させていただきました。

会場からは、

手術後下痢が多いのですがという方には、下痢がひどいときには前の晩に何を食べたか排便日誌をつけることで、緩くなった原因がわかることがあるので試してくださいというアドバイスをいただきました。

〈うんちを見て生活を振り返る〉〈うんちは生活の答え合わせ〉素敵な言葉ですと共感の声も参加者の方からいただきました。

ベッドで寝たきりの方で便秘の方に対するアドバイスを求められた方には、まず筋肉が固くなっていくので、動かしてあげて筋肉を柔らかくしてあげること、腸を順番にゆっくりとマッサージしてあげるといいですよと。
そして、その前にお腹が張っているかを確認してください、3日便が出ていなくても食事の量が少なければ便も作られないので便秘ではないので下剤を用いる必要なないですよと。

最後に矢野先生から驚きの発表が!

今日、矢野先生は人工肛門の袋を着用され、ファッションショーで履いておられたO-MU-TSUをされていたとのこと。
誰も気がつきませんでした、こんな世界が早く来るといいですね。

そして、そんな世界を目指してアクティブに活動されている矢野先生にたくさんの拍手が贈られ閉会となりました。