第45回 〈暮らしの中の看取り〉準備講座 は

=聴く力を養う!第7弾=「適切な距離感って?」をみんなで考えてみよう

というテーマで栗原幸江さんに講師をお願いしました。

 

栗原さんのお話を聞くのは、昨年のグリーフケア、ナラティブ・メディスンに続いて3回目でした。

今回のテーマ・・・「適切な距離感って?」

一見、ピンポイントなテーマのようですが、講座が進む中で、
実はとてもフォーカスしづらい難しいテーマだと気づかされます。

親兄弟、夫婦、医療者と患者、介護者と要介護者など、日常の様々な関係性の中で、
それぞれの適切な距離感とは?

参加者それぞれの中で、感性と思考の旅が始まります。

【ワーク1】
講座の最初のパートでは、小説から抜粋した、要介護者の家族と認定調査員との会話を題材に、
問題点や感想を共有しました。

経験豊富な職業人にありがちな失敗例だからなのか、意見がよく出ます。

・まずはよく観察すること
・相手のサインを見落とさないこと
・自分の経験値を一方的に押しつけないこと
・みんなそうだと決めつけないこと
・無用なアドバイスや指図は距離感を損なうこと

【ワーク2】
次のパートでは、筋ジストロフィーの患者さんの5行詩を題材に、
「5行詩の空気感から察したこと」を共有しました。

こちらはおそらく成功例ですが、5行詩の世界観から、登場人物の関係性や
距離感を推察することを要求されます。

ひとつの言葉の解釈をとっても、人それぞれで、詩の中のひとつの場面ですら、
登場人物の関係性や距離感について「これだ」という答えには至りませんでした。

この講座を通じて、参加者間で共有できたこと。

・場面によって様々な要素があって、「この距離!っていうのはない」ということ

・適切な距離感は、時間をかけて醸成することが望ましいけれど、時間をかけなくても
初対面で構築できる場合もあること

・そのためには、聴き手側の「間合い」の取り方が重要であること

・言葉のみに頼らない、沈黙を聴くことはやはり大切

栗原さんの講座は本当に不思議です。

テーマに対して「答えがない」ことに安堵したり、「距離感って難しい」と認識するほど、活力がわいてきます。

今回も参加者それぞれの中で「気づき」があり、ひとりひとりが聴き手として、よりよい間合い(距離感)を作っていくためのヒントを沢山いただきました。

 

最後に参加者のみなさんからいただいたアンケートのコメントをご紹介して活動報告とさせていただきます。

同じ詩を読んで、それぞれの感じるポイントの違いを少人数で話せたのは、良い体験でした。
良い距離感を保ちつつ話せる場の大切さを感じました。
書ききれないくらい、参考になる言葉がありました。
中のひとつ「距離感は伸び縮みする」同じ人との間でも、時と場合によって
近くなったり遠くなったりするというもの。付き合いがそれなりに長くなっても
時にこじれたりするのは、この「伸び縮み」が原因の場合もあるのかと。
距離感はその時その時の心地よい距離があり、 初めてだからとか今まで繋がりを
築いてきたとかで決まるものでない。相手の気持ちにフォーカスして適切な関係を
見極めることが大切。感じる感性を磨きたい。
距離感に対する思いもさまざま、相手にとって心良く思ってもらえるように察したいと思います。
①距離感が気になったときの事
・ひとそれぞれ、距離感いろいろある。
懐に入るのがちょっと怖い人、初対面の人と臆面なく話せる人がうらやましい人、
親しみを込めた言い方に不快感がある昭和のお父さん、話をしたくない人。
親しくなるまでプライベートは聞かないことと、フィーリングを大切にしている人もいた。・医療者として、色々と声をかけたことでお相手を怒らせた経験。
自分が焦っている時、自分が聞きたいことがあるなど自分の都合を優先したとき、
相手の状況(しんどい、自分の考えや家の事情がある等)が想像できず、寄り添えず、
対立にもつながる。
怒られた自分より怒った本人が辛かったと思うし、残り時間の少ない方に申し訳なかった。
医療者として、焦らない・自分の都合を優先しないこと。②感じたこと、考えたこと 詩を読んでの感想
・言葉をかけていたら生まれていなかった詩だと思う
・共感やスキンシップ、相手の気持ちを想像して言うことが大事だと思った
・言葉ー1つめの小説ではパンフレットを説明したとあり、それも良くなかったのかも。
パンフレットで不快な思いをしたことがあり、パンフレットは良くないなと思った。
認定調査員さんも、もしかしたらなんとか説明ないと、と必死だったのかもしれないと思った。
・逆に、言葉が、全く不要な訳でもないとも思った
他の方の意見を聞いてたくさんの気づきがありました。
とにかくくみサポが安心して話せる場だと言っていただけてとっても嬉しかったです。
相手の方の気持ちや痛みは全てわかることは難しいけど、相手の方を知ろうと思う、
思いを聞きたいと思うことを伝えるというのも大切だとグループで話しました。
距離を感じるという感覚なないほどの関係性になることは、時間だけではなく、
私たちの内側から出てくる人間性なのかもと思いました。
栗原幸江先生は国際的なお勉強とご経験がおありとの事、お話し大変興味深いものでした。
同じ文章を読んでも、人それぞれ違った視点があり、違いをじっくりと聴く事で、
相手の事を思っているつもりでも、自分目線の思いなんだな、と気づいた。
適切な距離感のHow to といった講義ではなく、参加者それぞれ気付きが心の中に残るような講義は
初めてでした。
感想文を書いてみなさい。小学校時代を想い出させていただきました。と同時に
己の感性の低下を痛切に感じてしまいました。ポイントを上手く話せない、書けないと
感じているので、「暮らしを変える書く力」という書籍を読み始めました。
感性が上がるか?ですが。
今日のグループディスカッションは進行役の鈴木さんが皆さんのお話を上手に
補足していただいたので楽しい時間でした。
同じ詩を読んでも、気になるポイントや言葉から受ける印象、想像する情景が
違っているということが、今回の研修で改めて実感できた。